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メタボが止まらない

 体に異変を感じたのは25歳を過ぎてから。腹田出男(はらだ でお)はお腹周りを気にし始めた。今まで70以下だったウエストが75を超え、とうとう80の大台に。26歳の誕生日を迎えたころには、完全なメタボ体系になっていた。ここまで腹が出てくると、衣服では隠しきれない。

普通のメタボ

 だが、そんな腹田に自信を取り戻す日が訪れた。晴天の中、近所の公園を散歩していると同じ年代のメタボ男と遭遇した。その富士山のように出っ張った腹を見たとき、勝利を確信し優越意識に浸る。

メタボ対決1

 あまりの嬉しさに、その日はケーキを平らげた。少しくらいなら・・・という油断が、この後腹田のメタボをさらに加速させた。もうこれ以上メタボの進行はないだろうと思っていたが、それは間違いだった。27歳で、とても人に見せられない立派なエベレスト山が君臨する。鏡を見て顔面蒼白になった。

エベレスト山のようなメタボ

 公園で、一年前に負かしたメタボ男と再会し、惨敗する。できれば再会したくはなかった。

メタボ対決2

 28歳になると、メタボの重さで日常生活にも支障をきたすようになる。体が前項して、腰が曲がる。階段を下りるときに注意が必要になった。少しでも集中力が途切れると、重さで前に倒れるからだった。腹田はそれを理由に二度と階段を下ることはなかった。エレベーターを使うようになる。

すごいメタボ

最後の喜び

 ただ、そんな腹田にも転機が訪れた。ある日、通りすがりの人から声をかけられる。
「バイトしてみないか?お前にしかできないバイトだよ」
「俺でいいんですか?」
この腹ではほかに仕事はなかった。ついてゆくことにする。1時間後、腹田は自分のものすごいメタボに合った天職に就いた。バイトとはいえ、自給2500円で巨大タンクのフタをしているだけでいい。天にも昇る気分になった。

すごいメタボ

めでたしめでたし。

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