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桃太郎 Version 780

昔、昔あるところにおじいさんとおばあさんが仲良く暮らしていた。
おじいさんは山へ芝刈りに、お婆さんは川へ洗濯に行った。

お婆さんが川で洗濯をしていると、川上から大きな桃が流れてきました。
「おお、こりゃでけえ桃だ」
おばあさんは、腕で桃をがっしり抱き上げると、それを家まで持ち帰った。
その途中で、桃は1秒ごとに秒針の音をカチカチと立てていたが、特に気にしなかった。

 

家に戻ると、おじいさんが疲れ果てた様子で壁際に横たわっていた。
「爺さん、これ見て。桃、でかいよ」
「なんじゃそりゃ」
「だから桃だって」
おじんさんは桃に目をやると、驚いた様子でその場で固まってしまった。お婆さんが訊く。

「どうしたの?」
「・・・それ、爆弾じゃないのか!?カチカチ音がするよ」
「そりゃするけど・・・」
婆さんは、ややボケていた。秒針の音がするならば、本来すぐに爆弾だと想像できる筈だった。
しばらく考え込んだ末、ようやく爆弾である事に気がつくと、顔面蒼白になった。

「ひぃいいいいい!!」
瞬く間もなくパニック状態に陥った。逃げる行動まで思考が働かない。
一方、爺さんは死を覚悟したのだろうか、両手で自分の頭を押さえている。

秒針がカチカチカチ・・・・と、次に一瞬止まる。
短い間をおいて、 それは起こった。

『パカッ』、
と音を立てながら桃が半分に割れ、中には大きなバースデーケーキが見えた。
爺さんがタイミングを見計らったかのように大きく飛び上がり、歓声を上げる。
「ばあちゃん、120歳の誕生日おめでとう!!!」
「ひいぃ、来ないで!」
婆さんのパニック状態は治まるどころか、一向に悪くなっていくばかりで、 とうとう家を飛び出していった。

こんな筈ではなかった。愛する妻のためにわざわざ用意した時限爆弾を装った桃。大きなバースデーケーキ。人は窮地に立たされるほど、愛する人を頼りにするとどこかで聞いたことがある。
そして、その窮地を乗り越えた時に、夫婦の絆はさらに強くなるのだ。
だからこそ、このバースデーケーキの演出はそれと似たような効果があって、より一層喜んでくれると思っていた。しかし、現実は違っていたのだ。

「待ってくれ、婆さん!これはお祝いなんだ!」
あとを追いかけた。しかし、婆さんの姿は既にどこにも見当たらない。
「こんな・・・こんな筈では・・・」

 

それから3日後。
パニック状態のまま、とうとう体力が尽きて道に倒れた婆さんを助けたのは、桃太郎と名乗る巨漢の男だった。身長233cm。
「婆さん、俺は老人フェチなんだ。結婚しよう」
「あんた、名前は?」
「おれは桃から生まれた桃太郎」

桃太郎の話によると、その桃は川ではなく空から隕石のように降ってきたらしい。
すでに鬼を退治してある事がわかった。
「毎日、俺のために愛のきびだんごを作ってくれ」
「いいわよ」

婆さんの短い第二の人生が始まった。

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